身体図式をつくろう ①
前回、動作のつながりを書きました。今回も動作について考えていきます。
お母さんの体内から出てきた赤ちゃんは羊水にいたときと違って(浮力があった)重力の影響下に置かれます。そして重力下で動けるように発達していきます。上下方向、左右方向、ねじれの方向と体を動かせるようになりながら、首が座る、あおむけ、寝返り、うつぶせ、よつばい、はいはい、おすわり、つかまり立ち、よちよちあるき、といった流れで粗大運動ができていくと思います。1歳半ぐらいまでに一生使う運動機能の基礎が出来上がるわけですが、言葉が理解できる以前の乳児が、どうして歩けるようになるのでしょうか?(ちなみに、体の部分を言えるのは1歳6ヶ月頃から、前後左右の理解は3歳6ヶ月頃と言われています。)
赤ちゃんの運動中は、表在感覚(さわった感じ)、深部感覚(筋肉の長さ、関節のまがりぐあい)前庭・平衡感覚(頭の傾き、動くはやさ)、視覚(みえるもの)、固有感覚(筋肉の張りぐあい)といった外界の様子と自分の位置関係を感覚情報として脳が知りながら、体をうごかすために脳から筋肉に司令を送って動作おこないます。これが繰り返されながら、からだが今どのような姿勢にあるのか,からだの各部位がどのような位置関係にあるのか、ある動作を取るにはからだのいろいろな部分を、どこからどこへどのくらい動かせばよいのか、といったことを無意識にできる基準や指標を徐々につくりあげるのです.これを身体図式(body schema)といって、ヒトにとって動作の基礎となるものです。身体図式ができあがるにつれて、首の座り、あおむけ、寝返り、うつぶせ、よつばい、はいはい、おすわり、つかまり立ち、よちよちあるきができていくのです。
身体図式があることで、無意識下での運動がスムーズにこなせるようになります。例えば、歩くことをとっても、歩くことは意識しても体のうごかし方を意識しなくても、体は協調的に効率よく歩いてくれます。大勢の人混みに中でもうまくすり抜けるために、歩くスピードを変えたり、体を捻ったりして、ぶつかったり転んだりしないで歩く事ができるのです。
「トンネルをくぐる」
周りの状況に合わせた姿勢になって遊んでいます。トンネルの高さより低い姿勢にし、かつ適度な空間をとって進みます。
「巧技台を渡る職員」
巧技台を渡ることは意識していますが、体の動かし方や筋肉への力の入れ具合は無意識下
でおこなわれています。
ところで、ボディ・イメージ、身体像(body image)という言葉がありますが、これはどのようなことを指すのでしょうか。例えば、「そろそろとあるく」、「うさぎみたいにあるく」なんて言われたらどう歩きますか。きっと普段と歩き方を変えるとおもいます。「すりあし」にしたり「はねて」あるきますね。」あるき方が変わっても、基本的な姿勢を崩さず体を動かすといった身体図式にのっとった部分はかわりません。「そろそろ」「うさぎ」といった意識的な部分を想起することを身体像(body image)といいます。
「うんとこしょ・どっこいしょ」
本当に引っ張っているのではなく、絵本「おおきなかぶ」のあるシーンを表現しながら動作を行っています。この時も、姿勢を維持しながら身体を動かすこと自体は無意識下で行われています。
運動発達の遅れや不器用といった問題があるとしたら、大きな課題として身体図式が未熟なことがあげられるかもしれません。(つづきます)